2016年最後の建築は坂茂による女川駅。3.11で流失した駅舎の再建。駅には女川温泉湯ぽっぽも入るコンプレックス。線路の突き当たりに門型に配置され、その向こうに女川の海が広がるという、極めてシンボリックな建ち方。周囲に明かりがない中、膜屋根が浮かび上がるのは、行灯的役割を果たしている。
屋根が特徴的で、400φ位のスチールパイプでウミネコをイメージしたという形状を持ち上げ、積層した合板を網目状に掛け渡し、構造体をつくる。そして、合板に束立てして、二次部材のスチールを掛け渡し、膜を張るという労力と精度を要する構法が取られる。東北でスチールを露出した構造がありなのか、耐久性については長い目で見てみたい。
人影のまばらな町で、列車の本数も限られている駅に温泉が複合用途として入るのは相性が良い。内部は紙管の家具や、紙管の天井材が使われ坂さん流のデザインに仕上げられている。大晦日の夕方だったので利用者も限られていたけど、もっと多くの利用者が休憩室を使っている状況も見てみたい。